白木蓮の最大の魅力はしっとりとした質感の花弁だと思います。
肉厚なのに不思議な透明感のある乳白色。
葉にさきがけて咲く花とグレイの幹との
上品なコントラストも美しい花木です。
一方、紫木蓮は春の花木にはめずらしい濃い紫色。
このほかモクレンの仲間の園芸種には、
黄色やごく淡い薄いピンク、赤、花弁が
二色のぼかしになるものなど、さまざまな花色があります。
早春に出る蕾は
やわらかな細毛に包まれた姿。
花弁はその下に包まれていますが、
日のあたる南側が早くふくらむので、
蕾はかならず北側に傾きます。
この左右非対称の形から、
「北風に向かって伸びる」と
言われたりもします。
右写真は花後にできる実とタネ。
花はあれほど優雅で
たおやかな風情なのに、
実はそこから想像もつかない
グロテスクな姿をしていて、
一見、虫の巣のように思えます。
実は秋になると熟して黒くなり、
やがてそれが割れ、中から朱赤色のタネが出てきます。
しかもこのタネには白い糸がついていて、
袋からゆらゆらと垂れ下がります。
この花にしてこの実。モクレン属も奥深い。
ちなみにモクレン近縁種であるコブシにもそっくりなタネがつきます。
またモクレンは狂い咲きしやすい性質を持つようです。
花後の夏や秋、時には晩秋に入った頃でも、
あたたかい日が続くと花芽ができて開花します。
葉が茂ったあとに花が咲いていたら、
それは狂い咲きの花。
ハクモクレンやコブシにはあまり見られませんが、
シモクレンの狂い咲きは多く、とくにここ数年は
その数が格段にふえているような気がします。
これも地球温暖化が進んでいる証拠かもしれませんね。
(右の写真は2003年11月のもの)
ハクモクレン 白木蓮 Magnolia denudata(モクレン科モクレン属)
中国原産。花弁は6枚だが、花弁とそっくりな萼が3枚つくため、
一見すると花弁が9枚に見える。
モクレン(シモクレン) 紫木蓮 Magnolia liliflora (モクレン科モクレン属)
中国原産。花弁は赤紫色で、ハクモクレンと区別するために
シモクレンと呼ばれることも多いが、正式和名はモクレン。
花弁は6枚。花の下には3枚の萼がつく。
花がやや小型で花弁の内側が白い変種トウモクレンもある。
コブシコブシ 辛夷 Magnolia kobus
(モクレン科モクレン属)
日本原産。モクレンに似るが、花はやや小型。
咲きすすむと花弁はひらいて垂れ下がる。
花弁は6枚。下に3枚の萼と小さな葉1枚がつく。
シデコブシ 四手辛夷 Magnolia stellata
(モクレン科モクレン属)
日本原産。コブシの花と似るが、
花弁の数は1輪10枚以上とずっと多い。
萼と花弁はよく似ていて区別がつきにくい。
英名はスターマグノリア。
京王フローラルガーデン・アンジェ(旧・京王百花園)
東京都調布市多摩川4-38
開園/3~9月 10:00~17:30、10~2月 10:00~16:30
水曜休園、京王線京王多摩川駅下車、徒歩すぐ。駐車場なし。
日本国内の植物園にはモクレン類(マグノリア)の園芸種を
コレクションしているところは少なく、
まとめて実物を目にする機会はなかなかないが、
ここは30種200本というマグノリア・コレクションを持つ貴重な施設。
過去関連記事:
大木盛花 ・ 白木蓮